本来、遺言は必ずしなければならないものではありません。
遺言書がなければ法律の規定に基づいた相続手続きとなるだけで、これを法定相続といいます。
法定相続は、例えば「相続人が、配偶者とお子さんだけの場合は、相続分はそれぞれ2分の1ずつ」といったように規定されています。
この法定相続分と異なった遺産分けを希望される場合に、遺言書を利用します。
遺言書を作成しておいたほうがよい場合前述しましたが、法定相続分と異なった遺産分けを希望される場合に、遺言書を利用することになります。
特に、以下に掲載した事例に当てはまる方は、できるだけ、不備の無いしっかりした遺言書を作成されるべきでしょう。
理由は、ご家族や親族の構成によっては、ご希望とおりに遺産を残してあげることができなかったり、また、遺されたご家族などが遺産の争奪を引き起こしたり巻き込まれたりしないようにするためです。
そのようなトラブル防止に、遺言書が活躍することになります。
○ 財産を速やかに分けて、相続人が活用できるようにしてあげたい
○ お孫さん(子が存命中)や息子さんのお嫁さん、ご友人など、相続人以外の方に財産を分けてやりたい
○ お子様のいらっしゃらないご夫婦
○ 財産を寄付したい
○ 共有名義の不動産がある
○ 土地と建物の所有者が異なる
○ 亡くなった方名義の不動産がある 。
○ 配偶者、子、兄弟姉妹の仲が悪い
○ 内縁関係
○ 離婚経験がある
遺言の方法
遺言の方法は数種あり、すべて法定されています。一般的に、自筆証書遺言又は公正証書遺言が選ばれます。
自筆証書遺言
自筆証書遺言の要件は、全文、日付、氏名を遺言者が自筆する。
押印する。と規定されています。(民法968条)
すべてを手書きしなければならず、ワープロやパソコンを利用した遺言書は無効となります。(近時の民法改正により、財産目録等は、ワープロ・パソコンでの作成が可能となっております)
押印は「認印」で構いません。(拇印でも基本的に問題ありません。)
自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑(なければ指印)があれば、遺言者一人で、いつでもどこでも作成できます。
また、公正証書遺言のように、作成にあたっての手数料なども必要ありません。
但し、相続時に家庭裁判所の「検認」が必要になります。
検認とは
検認とは、家庭裁判所により、遺言書の形式等を調査・確認し、遺言書の内容を明確にして偽造や変造を防止するために行なわれる手続きです。
尚、検認手続きは、遺言書の内容について有効・無効を判断するものではありません。
ですから検認手続きを経たからといって、遺言書の内容がすべて有効なものとして認められるわけではありません。
※ 法務局の遺言保管制度を利用した場合は、自筆証書遺言でも検認は必要ありません。
公正証書遺言
公証人が関与するため証明力が強くなります。
手続きが多少面倒で費用もかかりますが、形式の不備や遺言書紛失といったトラブルはありません。また、相続時の家庭裁判所の「検認」手続きは不要になります。
相続開始後の手続きがスムーズに進みやすいため、お勧めする遺言書です。
※ 公正証書遺言の作成には、証人2名が必要になります。
そのため、遺言書の内容を、公証人のほか、証人2名が知ることになります。この点ご留意下さい。
秘密証書遺言
遺言書の中身を知られたくない場合に利用します。
その方式は次のようになります。
○ 証書(遺言書)を作り押印します。
○ ワープロで作成しても構いません。
○ 遺言者が証書(遺言書)を封筒に入れ、証書(遺言書)に使用したものと同じ印で封印します。印影が異なると無効となります。
○ 遺言者が、公証人と証人2人以上の前に封筒を差し出し、「自分の遺言であることと氏名住所」を述べます。
公証人が、封紙に証書(遺言書)を提出した日付と上記3の遺言者の申述を記載し、公証人、遺言者、証人がそれぞれ封紙に署名押印することにより、遺言手続きが終了となります。